奄美大島は、私が生まれた島。59歳での定年退職を機に、久しぶりにふるさとへ帰る旅に出ました。 世界自然遺産の森、加計呂麻島の静かな海、鶏飯の湯気と紫芋アイスの甘さ—— 子どもの頃の記憶をたどりながら、急がずに歩いた一週間の記録です。
本記事はアフィリエイト広告を含みます。
奄美空港に着いた瞬間、まず感じたのは光の強さと、懐かしい潮の香りでした。ここは私が生まれた島。 59歳で定年を迎え、あらためて故郷に帰ろうと決めたのがこの旅のはじまりです。 レンタカーを借りて島を走り出し、最初に立ち寄ったのは奄美観光ハブセンター。子どもの頃に 大人から聞かされていたハブの話を思い出しながら、標本や生態展示を通じてあらためて知ることができました。 島の人々がこの生き物とどう向き合いながら暮らしてきたかを知ると、故郷への見方が少し深まるような気がしました。
島の中央部、住用のあたりに広がる亜熱帯の森を抜けた先で出会ったのがマテリヤの滝です。 緑の濃さに包まれた小道を歩いた先、透き通ったブルーグリーンの滝壺が静かに水をたたえていました。 観光地らしい賑やかさはなく、聞こえるのは水音と鳥の声だけ。定年という節目にふさわしい、 静かで濃密な時間でした。
奄美大島の南、瀬戸内町の港からフェリーで渡った先にあるのが加計呂麻島です。 フェリー乗り場までの瀬戸内町の道も、赤瓦の屋根や道端の自販機までどこか懐かしい景色でした。 島のカフェでいただいたランチは、地元の無農薬はちみつやパン、スープが並ぶ素朴で丁寧な一皿。 そして訪れたビーチには、私たち以外に人影がほとんどなく、足跡だけが白い砂に残る静けさでした。
奄美に来たら外せないのが郷土料理の鶏飯(けいはん)です。白いご飯の上に鶏のほぐし身、 錦糸卵、パパイヤの漬物や椎茸などの薬味をのせ、あつあつの鶏だしをかけていただくお茶漬け風の一皿。 薬味の彩りと出汁の香りが、島の食卓の豊かさを教えてくれました。 合間に立ち寄った売店でいただいた紫芋アイスも、ねっとりと濃い甘さで旅の疲れを忘れさせてくれる美味しさでした。
大島紬村では、泥染めや手織りといった伝統工芸の工程を見学しました。一反の着物ができるまでに 気の遠くなるような手間がかかっていることを知ると、島の美意識と時間の使い方そのものに触れたような気持ちになります。 あいにくの雨の日には奄美市歴史民俗資料館へ。3万年前の遺跡・遺物から島の歴史をたどることができ、 あやまる岬の展望カフェは残念ながら準備中でしたが、雨に煙る海もまた奄美らしい表情のひとつでした。
今回の旅では3つの宿を移動しながら島を巡りました。それぞれに違う奄美の表情を見せてくれた宿の記録です。
帰省のたびに買って帰りたくなるのが、鶏飯のお取り寄せ、奄美素材のジェラート、たんかんマーマレード、 島の黒糖焼酎、大島紬の小物です。どれも奄美の風土と手仕事が詰まった、ふるさとならではの贈りものだと思います。
加計呂麻島の誰もいないビーチも、雨に煙る資料館も、故郷を歩くからこそ気づけた景色です。 定年という節目の帰省だからこそ、予定を詰め込みすぎず、島のペースに身を任せる時間の使い方ができました。
最終日の朝、空港近くのカフェでいただいたサンドイッチとアイスコーヒーを最後に、ふるさとでの一週間は終わりました。 鶏飯の味も、加計呂麻島の海の色も、子どもの頃の記憶と重なって、まだはっきりと思い出せます。
生まれた島に還暦を前にして帰るというのは、思っていた以上に特別な時間でした。 次はどこへ行こうか——そんなことを考えられるのも、急がずに歩く「ウクレレのテンポ」の暮らしがあってこそだと思います。